口腔外科とは?
口腔外科とは歯科のうち、特に口の中や顎、顔面に生じた疾患を扱う診療科のことをいいます。
口腔外科で行う治療は、抜歯、インプラント、顎関節症、外傷、粘膜疾患などの治療を主に行います。なお、悪性腫瘍の治療は、連携している病院を紹介させて頂いております。
診療範囲は、原則として、口の中(粘膜や骨も含む)、唇、上あごや下あごの粘膜、舌、顎の関節や骨、唾液を分泌する器官である唾液腺等とされていますが、口の周りだけでなく全身的な知識も必要となります。
対象となる疾患
難しい抜歯やインプラント
特に親知らずの抜歯では、歯茎を切ったり、骨を削ったりする必要がある場合があります。
そういった難しい抜歯や大掛かりなインプラントの場合、口腔外科の知識や技術が必要となってきます。
顎関節疾患
顎関節症に対する治療や、顎関節の脱臼(顎が外れた状態)にも対応します。
口の周りの炎症
たとえば長期間放置され、重度に進行した歯周病や虫歯は、歯や歯茎だけでなく、さらにその周りにまで炎症が広がり、発熱などの全身的症状が出る場合があります。
顔が目に見えて分かるぐらいに腫れる場合もあります。この場合は一般歯科での対応は困難で、炎症を抑えるための点滴や場合によっては手術が必要となる可能性もあります。
外傷(ケガ)
交通事故やスポーツ、転倒などによる顎や顔面の骨折や傷の治療を行います。またそれに伴って折れたり抜けたりした歯の治療も行います。
腫瘍
歯茎や口の中の粘膜に出来た良性のできものや悪性のものでは癌なども対象となります。
粘膜疾患
口内炎や手足口病など、口の中の粘膜の異常に対する治療も行います。
唾液腺の疾患
唾液腺の細菌感染をはじめとして、唾石症、シェーグレン症候群、唾液腺腫瘍などがあります。
有病者への対応について
わが国は、65歳以上の方の人口が20%を超え、超高齢社会に突入しています。歯科に来院される方で全身的な病気をお持ちの方が増えています。
そういった有病者の患者さんに対する歯科治療は疾患のない方に比べ、偶発症が起こる可能性が高くなります。治療を安全に行うためには、ごく稀であっても起こる可能性のある偶発症を防止するための対策を行う必要があります。
特に歯を削ったり神経を取るなど、麻酔を必要とする治療、抜歯やインプラント等の外科的治療の際には注意が必要となります。
また、現在、飲まれているお薬によっては、抜歯の際に注意が必要であったり、歯科で処方する薬剤との飲み合わせを考慮する必要がある場合もあります。
有病者の方にも安全・安心な治療を提供するために偶発症を防止するためには以下のような取り組みを行います。問診をしっかり行う歯のことだけでなく、全身的な病気についてもお伺いします。
現在のお身体の状態、治療中の病気、過去の全身的な既往歴、アレルギー等について伺います。また、お薬手帳を提示していただくこともあります。
かかりつけ医院との連携
特に外科的な治療が必要な場合は、詳しい身体の状況を伺うためにかかりつけのお医者さんに問い合わせを行い、情報交換を行うことがあります。
特に注意の必要な病気について
高血圧症
抜歯や麻酔について考慮して治療を行います。服用中のお薬によっては歯茎が腫れやすくなっていることがあります。
心臓の病気の既往のある方
事前に抗生物質を投与したり、使用する麻酔の種類を考慮する必要があることがあります。
血液サラサラの薬を服用中の方
抜歯のタイミングを考慮する必要があります。現在のプロトコールでは基本的に休薬をせず、縫合など局所止血で止血を行います。
骨粗鬆症の薬(ビスフォスフォネート系薬剤)を服用中の方
抜歯などの外科処置を行った際に顎骨壊死が起こることがあります。
そのため、内服薬の種類、服用期間等についてお伺いします。
糖尿病
状態によっては抜歯後の感染をおこしやすくなるので、抜歯のタイミングを考慮する必要があります。血糖値コントロール状況(HbA1c値等)についてお伺いすることがあります。
薬剤アレルギーの経験がある方
具体的に何のお薬で異常が起きたのか把握し、処方薬を考慮します。
歯科治療中や麻酔によって異常が起きた経験のある方
異常が起きた原因を把握し、治療の際、配慮を行います。
肝臓病の方
病状によっては出血しやすいことがあります。
エイズ(AIDS)の方
病状によっては抜歯等の外科処置後感染をおこしやすいことがあります。
喘息のある方
痛み止めの種類を考慮する必要があります。また長期的にステロイドを投与されている方は感染をおこしやすい可能性もありますのでお申し出ください。
てんかんの方へ
安全に治療を行うために、発作の起こりやすい状況や頻度について伺うことがあります。服用されているお薬によっては歯茎が腫れやすいことがあります。
認知症の方・認知症のご家族の方へ
患者さんの理解度・協力度に応じて治療を行います。明確な訴えが出来ない方の場合ご家族に状況を伺いながら対応していきます。
悪性腫瘍の方
抗がん剤や放射線治療中の方は、白血球や血小板が低下している場合があります。抜歯などの外科治療に関しては全身状態が安定するまで治療を待つこともあります。
膠原病やSLEなどの自己免疫疾患の方へ
ステロイドを服用されている場合は外科処置後に感染が起こりやすい場合がありますので考慮が必要です。
甲状腺の病気をお持ちの方
麻酔の種類を考慮する必要がある場合があります。