虫歯や歯周病などによって歯を失ってしまったとき、どんな治療法があるのか、または抜けたままにしていると、どんな影響があるのかをご紹介いたします。
歯が抜ける原因
歯周病
歯周病を放置していると、顎の骨が溶け、歯がぐらつき、最終的には歯が脱落してしまいます。
歯を失う原因の第一位は、虫歯ではなく歯周病です。
虫歯
虫歯が神経を含む歯髄を侵し、歯の大部分を失うほど進行すると、最後には被せ物の土台とすることもできず、抜歯することになります。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、体重の3倍もの力を発生させると言われています。この甚大な力が長期間顎の骨にかかると、ぐらつきなどが生じ、抜けてしまうことがあります。
転んだ・ぶつけた
交通事故、スポーツ中の事故、転倒などによって、歯が抜けてしまうことがあります。
歯を抜けたまま放置すると
歯が伸びてくる
抜けた歯と本来咬み合っている歯が、スペースを埋めるために伸びてきてしまいます(挺出)。また、伸びるといっても歯そのものが長くなっているわけではありませんので、最終的には抜け落ちてしまいます。
歯が倒れてくる・捻じれてくる
歯列は、普段1本1本の歯が押し合って維持されています。そのため、歯が失われ何もないスペースが生じると、その隣の歯が倒れたり移動してきたりします。また、捻じれなどが起こることもあります。結果、歯並びも咬み合わせも悪くなります。
骨が溶ける
顎の骨は、噛んだときの刺激が歯を介して伝わらないと、溶けてしまう性質があります。そのため、歯を失って放置していることで、部分的とはいえ顎の骨まで失ってしまうことになります。併せて歯ぐきも痩せます。
また、後々にインプラントを希望された場合、その埋入が困難になります。
食事がしにくい
歯は1本1本が大切な役割を担っています。失った歯が前歯であろうと奥歯であろうと、食事の際には思わぬ苦労を感じます。咀嚼の不十分は胃腸への負担を増加させてしまいますし、何よりお食事を楽しむことができません。
歯を失ったままにしておくことは、お口と身体の健康だけでなく、毎日のお食事の楽しみにも影響を与えるのです。
発音に影響する
前歯の場合は、さ行、た行、な行、ら行が、奥歯の場合は「き」「し」「ち」などの発音が難しくなります。
喋ることが億劫になると、人付き合いそのものに消極的になってしまいます。
治療法とそれぞれのメリット・デメリット
ブリッジ
歯を失った箇所の両隣の歯を削り、そこに「失った歯+両隣の歯」の数だけ連結した被せ物を、橋(ブリッジ)のように取り付けます。基本的に連続して1~2本歯を失ったときに適応となります。
なお、ブリッジは取り外し式ではありません。
メリット
- 入れ歯と比べて、安定感があり、強く噛める。(インプラントには及ばない)
- ブリッジを使用する箇所によっては保険が適用される。
- 食べ物の温度をしっかりと感じられる。
- インプラントより早く治療が終了する。
デメリット
- 両隣の健康な歯を削る必要がある。
- 両隣の歯に問題がある場合には、先にそちらの治療が必要になる。
- 噛むときの力が両隣の歯にかかり、本来より長持ちしない可能性がある。
- 食べ物が挟まったり詰まったりしやすい。
入れ歯
人工の歯とその周りの人工の歯ぐきが一体になったものを装着することで、審美性・機能性を回復させます。
ブリッジと大きく異なるのは、3本以上の連続した歯を失ったときにも十分に対応できる点と、取り外しができる点です。すべての歯を失ったときには総入れ歯を、部分的に歯を失った場合には部分入れ歯を使用します。
メリット
- 3本以上連続して歯を失ったときにも対応できる。
- 取り外し式であるため、ブリッジよりも衛生管理しやすい。
- 保険の入れ歯であれば比較的短期間で作製できる。比較的安価。
- 高機能で審美性の高い自費診療の入れ歯が多数開発されている。
デメリット
- 毎日取り外した上でのお手入れが必要。
- 保険適用の部分入れ歯の場合は金属のバネが目立つ。またバネをかける歯に負担をかける。
- 保険適用の入れ歯の場合、強く噛めない。
- 保険適用の入れ歯の場合、審美性に劣る。
インプラント
顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、そこに連結部分(アバットメント)、セラミック製の人工歯を取り付けるのがインプラント治療です。
天然歯のような自然な美しさと、強く噛める機能性を併せ持ちます。
メリット
- 天然歯と同等の審美性を再現できる。
- 健康な歯と同じように強く噛める。
- 入れ歯のような異物感、違和感がない。
- 周囲の歯に負担をかけない。
- 食べ物の温度をしっかりと感じられる。
- 定期的なメンテナンス、毎日のお手入れで、長期間快適に使用できる。
デメリット
- 手術が必要になる。
- 顎の骨が少ない場合には、先に顎の骨の再生を促す治療が必要になる。
- 治療期間が長い。
- 費用が高額になる。
前歯がない場合
前歯を失った場合、噛めない、発音できないといった機能的な問題に加え、審美的な面で日常生活にさまざまな支障が生じます。
インプラント、ブリッジ、入れ歯のいずれも適応となりますが、機能性・審美性・長期安定性などを考慮した場合、基本的にはインプラントが第一選択になると言われています。
奥歯がない場合
奥歯と奥歯の間の歯(1本だけ)が抜けた場合
一般的に、インプラントとブリッジが適応となります。 ブリッジの場合はその両隣の歯に大きな負担を強いることになりますので、将来的なリスク、お口全体の健康を考えると、インプラント治療がおすすめです。
2本以上抜けた場合
奥歯を2本以上失った場合は、インプラントと入れ歯が適応となります。 入れ歯は部分入れ歯となりますので、保険適用のものであれば、金属のバネが必要になります。一方で自費診療の入れ歯の場合、審美性のある、比較的しっかり噛める入れ歯が作製できます。 ただ、3本、4本分の部分入れ歯となると、安定性が低下してしまいますので、そういった場合には本数にかかわらず高い安定性を維持できるインプラントをおすすめします。インプラントは、いずれの歯を失った場合にも高いレベルで審美性・機能性を回復することができる優れた治療法です。